離婚理由としてはそれほど多くはありませんが、稀に「配偶者が宗教に、のめりこんだために夫婦関係が悪くなった」ために離婚を考える人もいます。
これには結婚後配偶者が、特定の宗教と出会いで、のめりこみ始めたというパターンもあれば、実は結婚前からその宗教の信者で、その事実を隠していた、あるいはパートナーがそれほどまでに、のめりこんでいるとは知らなかったというパターンもあるでしょう。
いずれにせよ、宗教が原因で結婚関係がうまくいかなくなり、これを理由に離婚したいと考えるわけです。
しかし基本的に「信教の自由」は日本国憲法で保障されている人権の1つであり、これを配偶者が自分とは異なる信条を持っていたからといって、離婚できる原因にはなりません。
社会生活においても異なる宗教を持つ人同士が、お互いの信条や考え方を尊重し合いながら、同じ会社で働いていることも珍しくありませんから、まして夫婦であればなおのこと、お互いに認め合っていく必要があるでしょう。
しかし宗教活動が原因で、結婚生活の維持が難しくなっているという場合には、その事実が「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたるとして離婚が認められる可能性もあります。
例えば配偶者が、宗教活動にばかり終始して家庭を顧みない、多額の寄付金を、その宗教に振り込むため経済的に苦しくなっているといった場合です。
逆に言えば、こういった要因がないのであれば、宗教活動に熱心であったからと言って、一方的に離婚が認められてしまう心配はありません。
また別のパターンとして、例えば夫が妻の宗教活動にあきれ果て、もう一緒に生活できないとして家を出、その別居期間が3~5年以上に及んだ場合、その長期間に及ぶ別居状態から「夫婦関係は破たんしていた」として離婚が認められることもあります。
しかしこの別居期間中も、夫は妻の生活費を顧みていなければ、逆に夫にとって不利な事態になります。
いずれにしても、宗教が原因で裁判にまで至り、離婚判決が下るというケースはそれほど多くありません。離婚に至る前によく話し合って妥協案を考えること、更に言えば結婚前に宗教観について話し合っておくことがもっと大切でしょう。